ていねい書店

ぬくぬく
不便はいつも、人間でいさせてくれる。

駅までの道で傘を忘れたことに気づいた。

できるだけ雨に濡れぬよう
軽く走ることは面倒だったけど、
頬を伝う冷たい雫が妙に心地よかった。

水たまりを飛び越えるための
ジャンプもどこか懐かしさを感じて
気持ちが弾んだ。

自分が生んだ不便だけど
失敗と名付ける気にはならなかった。

便利さが、時間をくれていたとしたら
不便さは、魂を与えてくれる。

ボタン一つで全てが済む世界なら、
僕はきっと人間らしさを捨てるだろう。

不便がそばにある。
それは僕が僕でいることだと言える。

面倒くさいな、とつぶやきながらも
僕は今日、人間ができたことを喜び歩く。

言葉:ポエム★よしき
イラスト:大久保惠夢

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力を抜くから、たどり着ける場所もある。
眠れない夜の戦士たち。
まちがいさがしより、ちがいさがし。
奇跡の上に、立っている。
速度には、気持ちが隠れてる。